アジアUPDATE

HOME > アジアUPDATE

アジアUPDATE

2019.02.27

【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第40回『A Guide to Digital Token Offering改訂版の公表』
【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第40回
このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights95号(20192月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。

◇ シンガポール:A Guide to Digital Token Offering改訂版の公表

2018年11月30日、Monetary Authority of Singapore (「MAS」)は、デジタルトークンの勧誘に関する指針をまとめたA Guide to Digital Token Offeringsの改訂版(「2018年指針」)を公表しました。2018年指針は、2017年11月に公表された同指針(「2017年指針」)がアップデートされたものです。
以下では、これまでの経緯を簡単に振り返った上で、2018年指針の概要をご紹介します。
 
(1) これまでの経緯
 
近年、企業が株式ではなくデジタルトークンを発行して資金を調達する「イニシャル・コイン・オファリング」(「ICO」)の事例が多く見られるようになりました。本稿の執筆時点では、シンガポールにはデジタルトークンやICOに関する直接的な法律上の規制は存在しませんが、MASが既存の法令の解釈等について指針を公表しており、それらが実務上参照されています。
MASはまず、2017年8月、デジタルトークンもSecurities and Futures Act(日本でいうところの金融商品取引法、「SFA」)等の金融関連規制上の金融商品(capital markets products。例えば株式、社債、集団投資スキーム持分等)に該当するのであれば当該規制に服するとの意見を公表し(「2017年意見」)、さらに同年11月、2017年指針を公表し、規制に服する具体的事例を示しました。
その後、2018年10月にSFAの改正法(「2018年改正SFA法」)が施行され、さらに同年11月19日付で、Payment Service Bill(決済サービスに関する法案、「PSB」)が議会における審議に付されたことを受け、PSBの内容を踏まえた2018年指針が公表されるに至りました。なお、PSBは、2019年1月14日に議会で可決されましたが、その施行予定日は本稿の執筆時点では明らかではありません。
 
(2) 2018年指針の概要
 
(a) 証券取引規制の適用に関する指針(大きな改訂なし)
2018年指針では後記のとおり、PSBを踏まえた説明が追記されるとともにケーススタディが拡充されていますが、基本的なスタンスは2017年意見及び2017年指針から変更ありません。
具体的には、ICOにおいて発行しようとするデジタルトークンに株式、社債、事業信託、集団投資スキーム持分の権利、有価証券関連デリバティブ契約に基づく権利等が化体している場合、SFA上の金融商品(capital markets products)に該当し、当該デジタルトークンの勧誘・発行はSFAの規制に服することとなります。例えば、発行しようとする企業がデジタルトークンの勧誘を行うときに、MASに登録された目論見書を提供する必要があります。またデジタルトークンが集団投資スキーム持分に該当する場合には、MASによる承認(authorisation)・認証(recognition)が必要となります。もっとも、少額募集、少人数私募、機関投資家向け又は適格投資家向けの募集等の一定の例外に該当する場合、上記の目論見書に関する規制やMASによる承認・認証は免除される可能性があります。
またデジタルトークンの勧誘・発行、売買が行われるプラットフォームの運営者や、デジタルトークンに関するファイナンシャルアドバイザー業を行う者等(intermediaries、「デジタルトークン仲介者」)についても、適用除外要件を満たさない限り、SFAやFinancial Advisers Act(「FAA」)に従い、ライセンスの取得等が義務付けられる場合があります。具体的には下表のとおりです。
 

対象業務 必要ライセンス等
金融商品に該当するデジタルトークンの勧誘・発行が行われるプラットフォームのシンガポール国内での運営 当該プラットフォームの運営が該当するSFAの規制業務に対応したcapital markets serviceライセンス
投資商品(investment product)に該当するデジタルトークンに関するファイナンシャルアドバイスのシンガポール国内での提供 FAAが規定するfinancial adviserライセンス
証券、デリバティブ契約又は集団投資スキーム持分に該当するデジタルトークンの売買プラットフォームのシンガポール国内での設立又は運営 MASによるSFAに基づくapproved exchangeとしての承認又はrecognised market operatorとしての認証
 
(b) マネーロンダリング・テロ資金供与に関する指針(改訂あり)
デジタルトークンにより可能となるボーダレスかつ匿名の取引は、マネーロンダリングやテロ資金供与の温床になりかねないことから、2017年指針において、デジタルトークンを勧誘しようとする者も、MASのマネーロンダリング・テロ資金供与防止に関する通知(MAS Notice on Prevention of Money Laundering and Countering the Financing of Terrorism、「AML/CFT requirements」)の対象となり、取引先の本人確認等が求められることとなる場合がありうるとされていました。
そして2018年指針では、デジタルトークン仲介者でライセンスの取得が必要とされ、実際に取得した者(つまりcapital markets productsに該当するデジタルトークンを扱っているデジタルトークン仲介者)は、AML/CFT requirementsの対象となり、マネーロンダリング等のリスクについて認識し、それを最小化するよう手段を講じる必要があることが明記されました。
 
(c) PSBを踏まえた指針(新設)
PSBは、同法案において定義された「Digital Payment Token」に該当するデジタルトークンを取り扱うサービスを、マネーロンダリング・テロ資金供与防止の観点からライセンス制とし、ライセンスを受けて上記サービスを行う者をAML/CFT requirementsの対象としました。そして、その旨が2018年指針において明記されました。
Digital Payment Token該当性に関する最も重要な判断基準は、「物品・サービスに対する支払いや債務の弁済の媒介手段として、(少なくとも一部の)公衆に受け入れられている(又はそのように意図されている)こと」とされています。
 
(d) サンドボックス制度(従来どおり)
2018年指針は、2017年指針と同様、サンドボックス制度(regulatory sandbox)にも触れています。サンドボックス制度とは、期間限定で、法律の規制を受けるか明確でない最新テクノロジーを用いたサービスを試験的に行うことを認める制度です。シンガポールでは2016年11月から導入されており、MASのウェブサイトによれば2019年2月19日現在、3件の運用が確認できます。当該制度を利用することで、MASによる新規ビジネスに対する規制面に関するサポート(特定の法律上又は規則上の要件の緩和)を受けられるようになります。
 
(3) 終わりに
 
デジタルトークンに関しては、今後の技術の進歩に伴い、さらに規制内容や指針等がアップデートされていくことが予想されますので、引き続き注視していく必要があります。
 
※当事務所は、シンガポールにおいて外国法律事務を行う資格を有しています。シンガポール法に関するアドバイスをご依頼いただく場合、必要に応じて、資格を有する
シンガポール法事務所と協働して対応させていただきます。

(直近記事)
第37回『ベトナム  外国人労働者の社会保険加入に関する政令の施行』
第38回『シンガポール 改正雇用法の成立』
第39回『サイバーセキュリティー法に関する政令案の公表』
【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

前のページへ戻る

  • セミナー&商談会のご案内
  • アジアUPDATE
  • 国別情報一覧

PAGETOP