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2018.12.25

【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第38回『改正雇用法の成立』
【シンガポール】森・濱田松本法律事務所 アジアニュース/第38回
このたび、森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループでは、東南・南アジア各国のリーガルニュースを集めたニュースレター、MHM Asian Legal Insights93号(201812月号)を作成いたしました。今後の皆様の東南・南アジアにおける業務展開の一助となれば幸いに存じます。

◇ シンガポール:改正雇用法の成立

2018年11月20日、改正雇用法案(The Employment (Amendment) Bill)が議会において承認されました(「改正雇用法」)。本レター第84号(2018年4月号)において、シンガポール人材省(Ministry of Manpower:「MOM」)大臣の答弁に基づいた主要な改正予定事項をご紹介しましたが、本レターでは上記各事項を含めた具体的な改正内容を改めて整理したいと思います。
2019年4月1日から施行される改正雇用法のポイントは、以下の4点です。
 
(1) 雇用法上の保護基準の撤廃
 
現行法上、月給4,500シンガポールドル(現在の為替レートで約37万1,000円)を超える専門職・管理職には雇用法が適用されないところ、改正雇用法では同基準が撤廃され、有給取得や祝日の就業に対する補償、不当解雇規制等に関する雇用法上の中心的な規定がすべての労働者に適用されることとなります(詳細は本レター第84号(2018年4月号)をご参照ください)。
 
(2) 雇用法第4章の規定による保護対象者の拡充
 
現行法上、労働時間・残業代の支払いに関する雇用法第4章の規定は、専門職・管理職に当たらない非ワークマン(典型は一般の事務職・営業職:「ノン・ワークマン」)に関しては月給2,500シンガポールドル(現在の為替レートで約20万6,000円)以下の者にのみ適用されます。改正雇用法ではこの基準が引き上げられ、月給2,600シンガポールドル(現在の為替レートで約21万4,000円)以下の者に適用されることとなります。僅か100シンガポールドル(現在の為替レートで約8,000円)の差ですが、MOMによると上記改正によりおよそ10万人のノン・ワークマンが新たに同章の適用対象となるとのことです。
 
(3) 紛争解決手段の一本化
 
改正雇用法により、それまで異なる手続を取るよう規定されていた賃金に関する紛争と不当解雇に関する紛争につき、解決手続が一本化され、すべて労使紛争裁判所(Employment Claims Tribunal)の管轄となります。これにより、労使双方にワンストップサービスが提供されることとなります(詳細は本レター第84号(2018年4月号)をご参照ください)。
なお、上記改正に伴い、MOMより不当解雇規制に関するガイドラインが公表される予定であり、その中で不当解雇に該当する具体的ケースが例示される予定です。
 
(4) 柔軟な雇用関係構築のための、使用者が取りうるオプションの改正
 
改正雇用法については、労働者保護の拡充の側面が注目されがちですが、実際は使用者のための改正事項も含まれています。
(a) 祝日の労働に対する補償のオプションについての改正
 
現行法上、ワークマン及びノン・ワークマンに対しては、祝日に労働させた場合、①日給分を上乗せした給与を支払うか、又は②一日分の有給休暇を提供する必要があります。改正雇用法では、月給4,500シンガポールドル(現在の為替レートで約37万1,000円)を超えるワークマン及び月給2,600シンガポールドル(現在の為替レートで約21万4,000円)を超えるノン・ワークマンについては、上記に加えて、③時間休暇の提供を選択することもできるようになります。
なお、現行法上、雇用法の適用対象である月給4,500シンガポールドル以下の専門職・管理職に対しては、祝日に労働させた場合、上記①~③のいずれかによる補償を行う必要がありますが、適用対象外の者に対する補償については特に法律上の要請はありません。これに対して改正雇用法では、上記(1)記載のとおり、雇用法上の中心的な規定がすべての労働者に適用されるようになることに伴い、すべての専門職・管理職に対して、祝日に労働させた場合、上記①~③のいずれかによる補償を行う必要があることとなります。
 
(b) 給与からの控除対象の増加
 
現行法上、使用者は、労働者が欠勤・休業した場合又は会社の備品を破壊・紛失した場合にのみ、給与から相当金額を控除することを認めています。
しかし改正雇用法では、以下の2要件を遵守することを前提に、あらゆる控除が可能となります。
① 労働者が当該控除について書面で同意すること
② ①の同意につき労働者がいつでも罰則なしに撤回できること
例えば、使用者が任意加入の団体保険を福利厚生の一環として採用し、労働者が加入を決めた場合、使用者に依頼して給与からあらかじめ保険料を控除させ、使用者から保険会社に対して当該保険料を支払わせることが可能となります。
 
(5) まとめ
 
今回の雇用法改正は、シンガポールの労働法制における労働者保護を一歩進めようとするものです。
特に、専門職・管理職が雇用法の保護の対象に含まれることとなった点について、雇用法第4章が依然として適用されないとしても、これが実務上どのような影響を与えるかについて、注視が必要です。弊所でもセミナー等を通じて、この影響及び日系企業がとるべき対応について実務の動向を引き続きお伝えするようにいたします。
 
 
(ご参考)
本レター第84号(2018年4月号)
http://www.mhmjapan.com/content/files/00031234/20180420-124135.pdf
 
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【掲載元情報】
森・濱田松本法律事務所アジアプラクティスグループ  制作

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