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2018.12.13

【中国】陳弁護士の法律事件簿㊹「任務に耐えられない社員向けの効果的な研修」
【中国】陳弁護士の法律事件簿㊹
任務に耐えられない社員向けの効果的な研修
 
張さんはA社の営業担当者であるが、営業成績がいつも最下位であるため、営業部長から個別面談ということで部屋に呼ばれた。個別面談において、部長は張さんの問題点を指摘した上で、張さんと一緒に問題点を分析・検討した。個別面談後、部長はメールで張さんに営業のノウハウを教えた。毎週の例会において、営業部は特に「スピーチ能力の向上」をテーマとする研修を行った。
その後、A社は業務・制度に関する社員全員研修会を行った。張さんは全ての研修に参加した後も、営業成績が依然として最下位である。最終的にA社は、「張さんは任務に耐えられず、研修を受けた後もなお不適任である。」ことを理由に、張さんとの労働契約を解除した。張さんは不服で、裁判所に訴訟を提起した。
A社は「会社が張さんに対し研修を実施した」ことを証明するために、個別面談の記録、部長と張さんのメールやり取り、営業部の毎週の例会及び社員全員研修会の関連記録などを提出した。しかし、張さんは「それらの研修は効果がない。」と主張した。
 
『分析』:
 
『労働契約法』第40条には、「下記の状況のいずれかに該当する場合、雇用企業は30日前までに書面により労働者本人に通知するか、又は労働者に対し1ヶ月分の賃金を別途支給した後、労働契約を解除することができる。……(2)労働者が業務を全うできないことが証明され、職業訓練又は職場調整を経てもなお業務を全うできない場合……」と規定している。従って、雇用企業は「不適任」を事由に、一方的に従業員と労働契約を解除する場合、まず「解雇対象者に対し研修又は配置転換を行わなければならない。」という前提条件を満たさなければならない。本稿では、主に「研修」について分析する。
 
判例から見て、社員が任務に耐えられない場合に、会社による労働契約解除が合法であると認定されたケースはある。それらのケースにおいて、裁判所は雇用企業の提出した証拠に対して厳格な審査を行った。
 
本件の裁判所は下記の通り判断した。A社から提出された面談記録及びメールやり取りは仕事上の交流や意思疎通に過ぎない。メールで教えた営業のノウハウなどは実際の研修ではなく、ターゲットも明確にされていない。営業部の毎週の例会で行われた「スピーチ能力の向上」をテーマとする研修は、営業能力を高めるための研修ではなく、業務と直接関係がない。業務・制度に関する研修会は社員全員向けのもので、張さんをターゲットにしたものではない。A社の証拠では、「A社は張さんに対し効果的な研修を行った」ことを証明できない。
 
研修の効果が本件のキーとなる。中国の『労働契約法』では、研修の形式、内容について具体的な規定を明確にしていない。但し、立法の意図及び信義誠実の原則に基づいて、研修の目的は社員の業務能力を高めることにあり、研修の内容は社員の業務内容と職責に直接関係する。実務において、雇用企業は研修を行う際に、以下のことに注意するべきである。

1、形式に関して、内部研修又は外部研修、集中研修又は個別研修のいずれかを行う。
2、実施時間に関して、社員が任務に耐えられないことを確認した後、合理的な時間を決定して研修を実施すればよい。評価の実施周期が長ければ長いほど、合理的な研修時間も相応に延長するべきである。
3、回数に関して、原則として標準化・規範化された研修は少なくとも一回実施する。
4、内容に関して、社員の業務内容や職責と緊密に関連し、社員の業務能力を高める。
5、受講者に関して、混同を避けるために、任務に耐えられない社員と任務に耐えられる社員を分け、任務に耐えられない社員のみを対象としたほうがよい。
 
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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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