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2018.12.06

【中国】陳弁護士の法律事件簿㊸「不利益変更禁止」について
【中国】陳弁護士の法律事件簿㊸
「不利益変更禁止」について
 
2018年3月、甲社と乙社は「貨物売買契約」を締結し、契約において「貨物代金総額を500万元とする。」などを約定した。その後、乙社が代金支払を拒否したため、甲社は裁判所に訴訟を提起し、「乙社が500万元を支払う」ことを請求した。
 
第一審裁判所は、「乙社が甲社に対し300万元の貨物代金を支払うべきである」という判決を下した。甲社は第一審の判決に不服があり、第二審裁判所に控訴をした。第二審裁判所は審理した上で、「乙社が甲社に支払うべき貨物代金は300万元ではなく、200万元である。」と認定した。甲社は、「第二審裁判所は甲社の請求を棄却するという判決を下すことができるが、請求金額を300万元から200万元に変更するべきではない。」と考えた。
 
『分析』:
 
甲社の観点は「不利益変更禁止」という原則に該当する。「不利益変更禁止」は国際的に共通する用語で、各国の刑事訴訟法、民事訴訟法、行政訴訟法においてそれぞれ定義されている。民事訴訟法における「不利益変更禁止」とは、当事者の一方のみが控訴した場合には、控訴人の請求の全部又は一部が認められるか否かを問わず、控訴審の判決は控訴人の民事上の責任を加重することができず、控訴人の民事上の得ることができる利益を減少することもできず、控訴人の負担が控訴により原判決よりも重くなってはならないことを指す。
 
まず、中国では一般大衆も立法者や法律執行者も、実体の公正を求めているが、手続の公正を重視していない。
 
次に、中国の現行民事訴訟法には不備があり、「不利益変更禁止」に係る制度がない。従って、当該原則は中国の民事訴訟法には設けられていない。中国の現行法律規定によると、第二審裁判所は当事者の控訴請求の範囲の制限を受けることなく、第一審裁判所で認定された事実及び準拠法について全面的な審査を行い、これに基づいて、控訴人にとって第一審判決よりも不利に裁判することができる。
 
本件において、第二審裁判所は控訴を受理した後、下記のいずれかの方法を取ることができる。

1、「原判決で認定された事実と準拠法が正しいものである」と認定し、控訴を却下し、原判決を維持する。
2、「原判決で認定された事実又は準拠法が間違いである」と認定し、法に従い異なる判決を下し、又は原判決を破棄や変更する。
3、「原判決で認定された事実がはっきりしない」と認定し、原判決の破棄差し戻し判決を下し、又は事実を明らかにしてから異なる判決を下す。
4、原審が法定手続に著しく違反する場合(原判決において当事者不在又は違法な欠席裁判をする等)、原判決の破棄差し戻し判決を下す。
 
以上のことから、第二審裁判所は原判決の破棄差し戻し判決を下し、又は異なる判決を下す場合、甲社にとって第一審判決よりも不利な裁判結果となる可能性もある。
 
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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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