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2018.11.27

【中国】陳弁護士の法律事件簿㊷「刑事罰免除の対象になる犯罪行為」
【中国】陳弁護士の法律事件簿㊷
刑事罰免除の対象になる犯罪行為

最近、中国著名女優である範冰冰の巨額脱税事件が社会的な注目を集めている。しかし、範冰冰は当該巨額脱税行為による刑事罰を受けなかった。この結果は「罪を犯した場合、必然的に刑事罰を受ける」という社会通念とは一致していない。実は、中国の法律規定によると、犯罪行為を行ったにもかかわらず、刑事責任を追及されない場合もある。中国『刑法』及び『刑事訴訟法』等の法律規定に基づいて、下記の通り情状によって分析する。
 
『分析』:
 
(一)情状が著しく軽微で、大きな危害が生じておらず、犯罪と看做されない場合。
例えば、家族又は親族の財物を窃取したが、家族又は親族から許された場合は、社会に対し深刻な危害を与えておらず、通常、犯罪と看做さなくてよい。
 
(二)犯罪行為を行ったが、公訴時効(即ち訴追時効)を超えた場合。
中国『刑法』の規定によると、犯罪行為を行った後、一定期間が経過すると、刑事訴追を受けない。 具体的に言えば、法定の最高刑が懲役5年未満の場合は、5年経過後に、刑事訴追を受けない。法定の最高刑が懲役5年以上10年未満の場合は、10年経過後に、刑事訴追を受けない。法定の最高刑が懲役10年以上の場合は、15年経過後に、刑事訴追を受けない。法定の最高刑が無期懲役、死刑の場合は、20年経過後に、刑事訴追を受けない。訴追時効を設けるのは、社会大衆に通報を早くさせ、法意識を強化させ、司法資源の浪費を防止することが目的である。
 
(三)特赦により刑の免除の言い渡しを受けた場合。
例えば、2015年に習近平主席は、刑務所に服役中で、かつ釈放された後に社会に危害を加えない罪人を対象に、「主席特赦令」を発令した。
具体的に言うと、下記の状況に該当する罪人が一定の条件を満たす場合には、釈放される。
1、日中戦争、解放戦争に参加した者。
2、国の主権、安全、領土保全のために対外戦争に参加した者。
3、満75歳以上で、身体障害の程度が重くて全くセルフケアができない者。
4、犯罪を行ったときに18歳未満で、懲役3 年以下が言い渡され、又は残りの刑期が1年以下である者。
 
(四)告訴がなければ処理されない犯罪に該当し、告訴がなく、又は告訴を撤回した場合。
被害者が自ら裁判所に告訴する事件は、中国『刑法』において「自訴事件」と呼ばれる。例えば、侮辱、誹謗、暴力で婚姻の自由に対する干渉、虐待、横領による犯罪。このような刑事事件について、被害者は直接裁判所に告訴する必要がある。被害者が告訴せず、又は告訴を撤回する場合は、刑事責任を追及しない。
 
(五)容疑者、被告人が死亡した場合。
自然人が生存していることが刑事責任を負うための前提となる。自然人が死亡した場合、刑事責任を追及しない。
 
(六)法により刑事責任を免除されるその他の状況。
本件の範冰冰は巨額脱税行為を行ったが、刑法の規定から見て、税務機関から法に従い下された追徴通知書を受領後、自主的に未納分の追納及び滞納金の納付を行い、かつ行政処分を受けたため、刑事責任を追及されない。
 
当該規定により、範冰冰は刑事罰を受けなかった。又、この前に話題となった電気自動車の利用者が刃物を奪い運転手を殺した事件について、最終的に公安機関は正当防衛を理由に、刑事責任を追及しないと認定した。

以上
 
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【掲載元情報】
GPパートナーズ法律事務所 パートナー弁護士 陳 文偉
[略歴]
上海復旦大学卒業後、1992年日本に留学。
1995年から1999年まで九州大学法学部にて国際経済法を専修。
日本滞在中から日系企業に対し中国に関する法律相談や法務セミナーを実施。
1999年帰国後、活動の中心を上海とし現地の日系企業に対し法律サービスを提供。
中国における会社設立・M&A・清算、PL問題、労働訴訟等、日系企業の法的課題を多く解決。
[所属]
中華全国弁護士協会会員、中華全国弁護士協会経済法務専門委員会委員

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